世界の揺りかご
一次造作ぶろぐ
参
「……ここは……どこだ?」
オレはゆっくりと彼女を
見据えて言った
彼女は微笑んで、静かに立ち上がり
オレの元へ来た。――蛍の大群を連れて
「ここは<境目>(さかいめ)と呼ばれる、紫(シキ)の民が住む村です。
私は、この村の巫女をやっている――紫(むらさき)と申します」
「紫の民……だと?」
――紫の民。
大昔、人間と妖怪のあいだに立ち、種族のバランスを
影から守ってきた民。
そして、神に1番近いと言われている民。
「はい。 そういう貴方は<狩人>(かりびと)ですね?」
「……そうだ」
<狩人>、いわば人間に害なす妖怪どもを、狩る役目を
かせられている人間たち
「……そうですか。 しかしよかったです。
蛍たちが、貴方のことを教えてくれたんです。
もし、これ以上、治療が遅れていれば大変でした」
一瞬。悲しい顔を見せたが、笑顔になり
蛍たちが、彼女の周りを飛んでいた。
彼女は蛍たちを
優しい眼差しで見ていた。
「蛍が……? オレを……?」