世界の揺りかご

「ロウ」

レイは
ロウに、声をかける


すると、ロウは首だけ
レイが、いる方向へ向けた


「レイか……」

ロウは
静かに言った


するとレイは
無言で、ロウに近づいて行き
隣へ座った


レイは
光が、反射する湖へ
目を向けながらいった


「ロウ……ごめんね？」

「何がだ？」


「狂妖て言って……」


レイは言いにくそうに
地面に、顔を向け言った


ロウは、ピクリと動いて
しばし無言になる

「べつにレイが悪いのでないから、気にするな」


とロウは言った


「……やっぱり……狂妖狩りはツライ？」


「……」

今度こそロウは、黙りこんだ


――やっぱり聞く事じゃなかったかな……とレイは思った。


「…正直に言えば……ツライな……
たとえ妖怪の種類が違えど、オレも同じ『妖怪』……しかし……狂った同胞を見るのも、ツライ……だが……まだ狂妖と、
決まったわけではないだろう？」

確かにまだ、狂妖と決まったわけではないが
もともと瞳が、赤い妖怪なんて数すくない


もともと赤い瞳の妖怪は、貴重種で
ほぼいないに等しい


それは、ロウも分かっているはずだ



「ロウ……ツライんだったら、今回の仕事こなくていいよ？」


「優しいな……レイは……でも行くさ。 退治屋と契約して、ココにいるっていうことは、そういうこともあるし、今まで来なかったのが奇跡さ」


レイに
顔を向けながら、フッと静かに笑った

「ロウ……その姿で笑わないで……抱きしめたくなる」

今のロウの姿は、チワワみたいな小さくて、チワワみたいに目がデカイということはないが、その目は少しウルウルしてて、レイが抱きしめたいというのも頷けるものがある


「やめてくれ。 オレは、抱きしめられるということを好かん」

「ごめん。ロウ……」

レイは強く、ロウを抱きしめてしまった



「～っ、やめてくれ…っ」

「やだぁ～ だってロウ可愛いんだもん～」


ギュウと、レイはもっともっと強く抱きしめる、ロウの「ぐふぅ」という苦しそうは声がする


ロウは、ジタバタと暴れだしたが、それでもレイは離さない。 というか、もっと強く、抱きしめてるように見えた


「レッ……イ……くず……じぃ……」


「あっ ゴメン、ロウ」


あはは、と苦笑するレイに対し
ロウはゴホッゴホッといいながら
酸欠になった体に、酸素を送り込んだ


ロウは、１人言のように呟いた


「こういうとき……ゴホッ……結界があれば……ゴホッ……抜け出せるのにな…」


レイは、ロウが言った
言葉の1単語に反応する。


レイはまた、湖に
顔を向けてすわる。


「ねぇ……ロウ」


「何だ？」


「何で、わたし……結界はれないのかな？」


「……」


ロウはピクリと
眉を潜めた。レイに、気づかれないように


レイは
そのまま言葉を続ける。


「ほら、だってさ、水、土、風、炎、術ぜんぶ、習得してるのにさ。おかしいでしょ？ 普通全部マスターしたら使えるものだもの結界」


「ああ、そうだな」


生返事を
かえすロウ


レイは風が得意だが、他にも、水、土、炎の術を使える
結界を張るにはこの四つの力がほしい


レイの
風を除く、３つの力は、中の上ぐらい、風の力は上の強


バランスは、取れていないかもしれないが
普通の術師は、これで充分、結界を張れるのだが
レイは張れない

レイは手を動かして印を組む


「風、水、炎、土、我を守れ」


レイがそういうと
手を組んで、印を組む
そうすると、手のところに淡い光がでる。


しかし、光は、しゅう……とすぐに消えてしまった。


「んー……最初は上手くいくのにな……」


「……」


「ロウ？ なに黙ってるの？」


「いや、何もない。結界を張れないのは、オレにも分からんな……」


「だね。 よし、戻ろう。 ロウ、今から蓮夜に来るように、何万回も言わなきゃ」


笑いながら
ロウの顔を見る、それに対し
白い狼は「ああ…」と言う。


１人と１匹は
湖あとにした。

[0回]